こんにちは、ベンチャー支援をしている公認会計士の岡田です。
この記事では会社運営をするうえで必ず実施しなければならない、経理業務について書いていきます。
なお、当記事はあくまで一例であり、参考にして経理プロセスを構築したあとは税理士等に相談して、誤りがないか確認しましょう。
目次
経理の必要性
会社運営において経理の役割は主に3種類あります。
税務申告
会社は法人税、地方税、消費税等を納付する必要があり、そのために正確に会社の収入や支出を記録し、決算を行ったうえで税金を納付する必要があります。
決算公告
会社法において、会社は計算書類を作成し、監査役監査を受け、株主総会の承認を受けたうえで速やかに公告する義務があります。
内部管理
経営上の判断をする際、会社の運営状態を正しく把握する必要があります。
経理業務の一連のプロセス
経理業務では日次・月次・年次それぞれのタイミングでやることがあります。
日次処理
仕訳
日々、現金の入出金に即して、収入や費用を会計帳簿(仕訳帳や総勘定元帳と呼ばれます)に記録していきます。
これを「仕訳を切る」と言います。
ベンチャー企業の場合、会計freee等のクラウド会計サービスを使っていれば、現金の入出金先や銀行口座・クレジットカードと関連づけて自動で仕訳を切ってくれる機能が付いています。
現金管理
銀行口座以外に、現金を金庫等に保管している場合は、日次で現金の残高が会計帳簿と一致しているか確認しましょう。
ベンチャー企業では横領や盗難等もしばしば起こりますので、できる限り確認するようにしましょう。
月次処理
請求管理
月に一回程度、契約に基づき請求書を発行するタイミングを設定することが多いと思います。
会計freee等では請求書をシステム内で発行でき、自動で売上等を計上してくれます。
ただし請求に対応した入金が期限までに行われているかは、必ず月1回は確認しましょう。
支払管理
仕入や外注等を行なった場合は、先方から送付される請求書に従って支払いを行います。
月1回は債務一覧等を確認し、支払い漏れや二重支払いがないかを確認しましょう。
給与支払
給与支払についても、過大・過小支払がないか確認が必要です。
原則毎月一定額を支払うものですし、控除や法定福利費等の計算は複雑です。
出来る限り自動化すると良いでしょう。
会計freeeの場合、人事労務freeeというシステムも使っていれば、自動で仕訳を切るよう設定できるようです。
経費精算
あなた、または従業員が会社経費を立て替えた場合、月次で精算する必要があります。
会計システムに領収書等を読み込むことで仕訳を切ることができるほか、経費精算システムと会計システムを連動させることで自動仕訳をすることもあります。
なお税務申告のときなど、従業員等の立替経費は必ず領収書が必要なため、月次で支払う際に必ず会社として保管するよう心がけましょう。
年次処理
法人税・地方税・消費税
日次・月次で記録しておいた会計帳簿について、年度末に試算表という形にまとめて、誤りがないかを確認します。
また在庫の棚卸しや売掛金の貸倒れリスクの評価等を行います。
必要に応じて在庫の価値を再評価したり、売掛金の貸倒引当金を計上するなど、決算整理仕訳も行います。
そして、完成した年度決算書類に基づき、年度末の2ヶ月後までに法人税・地方税・消費税の確定申告と納付を行う必要があります。
申告書類作成や税額計算は非常に複雑なので、ほとんどの会社が税理士を使います。
所得税の年末調整
年度末というより、12月の年末には所得税の年末調整を行います。
従業員が納付する所得税は、基本的に給与から天引き(源泉徴収)され、会社が一時的に預かる形になっています。
ただ従業員が生命保険に入っていたり、住宅ローンを組んでいた場合など、天引きされた金額より本来負担すべき所得税が低くなることがあります。
その際、従業員からの申告に基づき所得税額を正しく調整する年末調整が必要になります。
こちらも人事労務freee等のソフトを使っていれば、会計システムとの連携が可能です。
取締役会・株主総会
会社法では、年度末の2ヶ月後までに株主総会を開催し、決算書類の承認を受けることが求められています。
また株主総会の前には、監査役の監査を受けたうえで、取締役会を設置している場合は取締役会の承認も必要になります。
また株主総会後は速やかに、官報等で貸借対照表を公告し、誰でも見えるようにしなくてはいけません。
管理会計
法令等で定められている義務は上記の通りなのですが、会社経営のためには日次・月次・年次の決算ごとに経営状態を振り返ることが重要です。
事業計画の目標が達成できているか、できていない場合は何が課題なのか、どう解決するのかを考える必要があります。
その際、収入や支出のデータだけでは有効な分析ができないこともあります。
そのため、他のKPI測定ツールも組み合わせ、収入や支出を構成するさまざまなKPIも一緒に振り返れるようにすると良いでしょう。
年間スケジュール
これらの経理業務について、3月末決算の会社の場合の年間スケジュールは以下の通りです。

記事内では書ききれなかったたくさんの業務も書いてありますが、税理士の先生にも聞きながら、徐々に学んでいきましょう。
まとめ
会社運営における最低限の経理業務について記載しました。
かなり面倒に感じられる方も多いと思いますが、安価な自動化ツールもたくさん存在しますので、うまく活用して効率的に実施しましょう。
この記事が経理業務の理解の一助になっていましたら幸いです。