こんにちは、ベンチャー支援をしている公認会計士の岡田です。
この記事では、製品・サービスをどのように世の中に知らしめ、販売するか、マーケティング戦略の作り方の一例をご紹介します。
筆者が実際にベンチャー企業支援の中で実施した方法をもとにしていますので、ひとつの実践例として参考にしてください。
目次
この記事におけるマーケティング戦略とは
まず、この記事における「マーケティング戦略」の位置付けを簡単に整理させてください。
日本マーケティング協会によれば、「マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動」とのことです。
市場創造のための総合的活動として、市場調査・市場分析・新製品開発・ビジネスモデル開発から、営業・販促・プロモーションまで幅広い活動が含まれています。
ただ、この記事では主に製品・サービスやビジネスモデルができた段階で、どのように営業・販促・プロモーションするかを考えることを、マーケティング戦略と呼びます。
市場調査・市場分析・新製品開発・ビジネスモデル開発については、「ビジネスアイデアの作り方」、「ビジネスモデルの作り方」の記事にて紹介しています。
マーケティング戦略の作成プロセス
目標(KGI)の確認
まず最初に、マーケティングによって何を達成したいのか、目標を明確化します。
既に事業計画を作成していたら、「あと半年で売上○○万円達成」という目標があるかと思いますので、それを書き出しておきましょう。
ファネルの確認
次に、現在自社の製品・サービスがどのように購入されているか、顧客ごとに「ファネル」を確認します。
ファネルとは英語で漏斗の意味で、マーケティングにおいては「顧客が商品やサービスを認知してから購入に至るまでのプロセスを表す図」を指します。

出所:Innovaブログ
見込顧客が様々なプロセスを経て購入に至るまで絞り込まれている様子が漏斗のようなので、使われています。
顧客が製品・サービスを「認知」し、「興味関心」を持ち、「検索調査」をしたうえで、「比較検討」「購入」し、気に入れば他の人に「共有」する様子をイメージしながら、まず自社の製品・サービスのファネルを書いてみましょう。
KPIの設定
その後、目標を達成するためにファネルの各段階ごとに定量的な目標(KPI)を設定します。
例えば、目標が「半年で売上高1000万円達成」だった場合、
「購入」において、単価10万円なので100個売る必要がある、
「興味関心」を持ち問い合わせをするユーザーは、問い合わせてからの購入確率10%とすると1000人必要、
「認知」してから興味関心を持って問い合わせするまでの確率を1%とすると、ウェブサイトの閲覧ユーザー数が半年で100,000人必要、
など目標から逆算し、各段階ごとに目標設定をしていきます。
この際、「KPIツリー」という手法を用いて、目標(KGI)の構成要素を何段階にも因数分解していき、各KPIを洗い出す手法を使うこともあります。
自社にとってマーケティング戦略がどの程度重要かにあわせて、どこまで分析するかを決めていきましょう。

出所:Innovaブログ
なおこの時点では、KPI数値自体は、目安の数値を決めていくくらいの精度でも結構かと思います。
現状の把握
次にファネルをもとに、現状の数値を把握して書いていきます。
例えば、現状の売上は月何個か、購入確率やウェブサイトの閲覧ユーザー数はどの程度か、を最新の事実ベースで把握します。
重要なKPIが把握できていない場合、これ自体が非常に問題なので、KPI 測定を可能にする有償・無償のマーケティングツールの活用等を検討しましょう。
まずは無償のGoogleアナリティクスやExcel等を組み合わせて測定・管理を行い、規模が大きくなってきたら有償のMA/SFA/CRMツールの導入を検討することが多いです。
さらに現状の営業・販促・プロモーション活動についても、詳細に書き出しておきます。
どのような顧客に対して、どのような接点でどのような情報提供・コミュニケーションをしているのか、しっかり把握しておきます。
課題の洗い出し
その後、KPIごとに現状の数値と目標数値を照らし合わせながら、営業・販促・プロモーション活動の課題を洗い出します。
認知されるためのチャネルやコンテンツは十分か、各段階で離脱を防ぐための情報提供・コミュニケーションは不足していないか、等を検討していきます。
その際、机上検討だけで終わらせず、実際の顧客や見込み顧客にもインタビューをしてみると、会社内部で気づいていない思わぬ課題が顕在化することがあります。
解決すべき課題には優先順位を決めておきます。
打ち手の検討
重要な課題が明らかになったら、打ち手を検討します。
日々様々なマーケティング施策が生まれていますので、マーケティングや業界の専門家も巻き込み、ブレインストーミングすると良いでしょう。
例えば、asanaによれば以下のようなマーケティング手法が考えられます。
- リードジェネレーション
- 広告
- メール
- コンテンツ
- ビデオ
- イベント
- ソーシャルメディア
- ウェブサイト
- 製品マーケティング
- 広報
- アナリストリレーションズ
- カスタマーマーケティング
- SEO
- 会話型マーケティング 等
さらにリードジェネレーション(見込み客獲得)には、アーンド・オウンド・ペイドといった手法があります。
打ち手をブレストしたら、具体的に誰がいつまでに実施するかを決めて、実行します。
測定・振り返り・改善
やりっぱなしでは、なかなか効果は上がりません。
打ち手を決めた時点で、いつ振り返りを行うか決めておくと良いでしょう。
そして、目標達成に貢献した打ち手・貢献しなかった打ち手を比較して打ち手を選別したり、改善策を出すようにしましょう。
まとめ
非常に簡単ではありますが、スタートアップにおけるマーケティング戦略作成の一例をお示ししました。
この分野は日々新たな概念や手法が生まれていますが、一番シンプルな方法を提示してみたつもりです。
ぜひ日々測定しながら、より良いマーケティング戦略を検討してみてください。