こんにちは、ベンチャー支援をしている公認会計士の岡田 哲意です。
この記事では、
- ビジネスモデルとは何か
- ビジネスモデルの構成要素と作り方
を解説します。
なお、この記事は「ビジネスアイデアの作り方」を読まれた方を対象にしています。
未読の方は、先に上の記事を読んでみてください。
目次
ビジネスモデルとは
ビジネスモデルという言葉は、起業・スタートアップ業界でよく使われる言葉ですが、実際のところ何を指すのでしょうか。
実は日本ビジネスモデル学会すら「定義が曖昧」というくらい、人によって解釈が異なる言葉です。
共通することは、「ビジネスにおいてお金を稼ぐ仕組み」という点くらいです。
この記事では、非常にシンプルなフレームワークである「リーンキャンバス」を作成することをビジネスモデル作成と定義します。
リーンキャンバス
リーンキャンバスは、シリコンバレーの起業家であるAsh Mauryaが「ビジネスモデルキャンバス」というフレームワークをよりスタートアップ向けに発展させたものです。
ビジネスモデルを非常に短時間で表現できるツールとして、多くの起業家の間で使われるようになりました。
ビジネスモデルの構成要素
リーンキャンバスは以下の9つの要素で構成されています。
- 顧客セグメント
- 課題
- ソリューション
- 独自の価値提案
- 圧倒的な優位性
- チャネル
- 収益の流れ
- コスト構造
- 主要指標
実際にキャンバスを書き写して、書き込みながら読むとイメージが湧きやすいと思います。

顧客セグメント・課題・ソリューション・独自の価値提案・圧倒的な優位性
実はこの5つについては、「ビジネスアイデアの作り方」で既に作成したといえます。
対応は以下の通りです。
顧客セグメント…ビジネスアイデアで特定した「顧客」
課題…同じく「ニーズ」
ソリューション…「製品・サービス」のアイデア
独自の価値提案…「最後に一文でまとめた文章」(独自の価値提案を、Ash Mauryaは「あなたが他と違う理由で、注意をひきつける価値」と表現し、Twitterで投稿できるほど短いのが理想と言っています)
圧倒的な優位性…「Competitor(競合)」で検討した優位性・参入障壁
チャネル
5つを書き込んだら、次は「チャネル」を検討すると良いでしょう。
チャネルは販路と訳されますが、「顧客との接点」の意味です。
あなたが製品・サービスを顧客に知ってもらい、使ってもらい、購入してもらい、アフターサービスを行う接点を設計します。
その際、以下の2点の掛け算を意識すると、「どの経路でどのタイミングの顧客にアプローチするか」網羅的に検討できると思います。
- チャネルの種類
- チャネルのフェーズ
チャネルの種類
オンライン/オフラインそれぞれでベストな方法を検討します。
オンラインの場合、自社ウェブサイト・代理店ウェブサイト・ECプラットフォーム・SNS・検索エンジン等が挙げられます。
オフラインの場合、店舗・自社営業・代理店営業・マス広告・街頭広告等が挙げられます。
チャネルのフェーズ
一般的に製品・サービスに関する顧客の行動は、認知・興味関心・比較検討・購入・共有などのフェーズに分けられます。
それぞれのフェーズにおいて、どのような方法を選択するか検討します。
収益の流れ
次に「収益の流れ」も検討しましょう。
その際、以下の4つの代表的な収益手段を考えるとスムーズかと思います。
- 販売
- 広告
- 課金
- マッチング
販売
収益獲得手段としては最も一般的なのが「販売」でしょう。
製品を仕入れて売る、または製品を作って売る、といった方法です。
自動車を作って販売するトヨタ自動車、スマホを作って販売するApple、製品を仕入れて販売するAmazon等、多くの企業が採用しています。
広告
インターネット普及に伴って存在感を増してきたのが「広告」です。
ユーザーに無償または定額でサービスや情報を提供し、集めた大量のユーザーに対する広告枠を販売する方法です。
スポンサーにCM枠を売るTV局、検索エンジンを無償で提供して検索広告で儲けるGoogle、SNSを無償で提供して広告で儲けるFacebook等が該当します。
課金
古くから存在しますが、近年クラウドの普及等で再注目されているのが「課金」です。
シンプルに言えば、サービス提供に対してお金をとることです。
提供サービスの量に応じて請求する従量課金、期間に応じて請求する定額課金、提供サービスにより何かの成果が出たら請求する成功報酬、サービスにかかる時間・経費をあらかじめ見積もって請求する前払い等の方法があります。
近年、App Store等のマーケットプレイスの普及・クラウド技術の普及により、定額課金を採用しやすくなり「サブスクリプション」という名前で注目されています。
あらゆるサービス業は課金ビジネスといえますが、動画視聴サービスを提供するNetflix、クラウド上でOfficeを提供するMicrosoft等がイメージしやすいでしょう。
マッチング
スマートフォン時代に非常に伸びているのが「マッチング」です。
人と人・人と商品等がマッチングする場所を、オフラインまたはオンラインで提供します。
そして、マッチングが成功すること自体、またはマッチングの結果生じた取引に対して手数料を取るビジネスです。
スマートフォンの普及により、非常に多くの人がインターネットを頻繁に使えるようになったため、オンラインでのマッチングサービスが非常に多く誕生しました。
古くは証券の売り手と買い手をマッチングして取引等に課金する証券取引所等があります。
最近では中古品の売り手と買い手をマッチングして仲介手数料を取るメルカリ、運転手と乗り手をマッチングするUber、空き部屋の貸し手と借り手をマッチングするAirBnB等が有名です。
コスト構造
収益獲得手段を決めたら、製品・サービスを提供して収益を得るために必要なコストを洗い出します。
実際にビジネスをやると、非常に多種多様なコストが発生しますので、すべてを洗い出すのはやりすぎです。
主要なものだけ検討しましょう。
以下の3種類は、多くのビジネスに共通して必要なコストです。
- 材料費
- 労務費
- 経費
材料費
材料費は、製品を販売する場合に発生する、製品の原料費、または仕入れた製品のことを指します。
まだこの世にない製品を開発・製造する場合は正確な見積りは困難だと思いますが、専門家にインタビューするなどして、可能な範囲で見積もりましょう。
労務費
労務費は、あなた自身を含む取締役の報酬や、従業員の給与・賞与等の人件費です。
製品を開発・製造・販売・アフターサービスを行うために必要な職種ごとの人数を考え、その職種の人件費相場をかけて見積ります。
こちらも現時点では正確には見積もれないものと割り切り、ざっくり検討しましょう。
経費
経費には、開発・製造のために必要な工場等設備の減価償却費、オフィスのために必要な賃料・水道光熱費、顧客獲得のために必要な広告宣伝費、様々な外注費等、材料費や労務費に含まれないあらゆるものを検討します。
こちらも重要なもの以外はざっくりで良いでしょう。
IT系のサービスの場合は、材料費が発生しない代わりに顧客・ユーザー獲得のための広告宣伝費が重要になります。
また研究者・技術者に多い製造系のビジネスの場合は、減価償却費や開発・製造委託のための外注費等が重要になります。
主要指標
最後の構成要素は主要指標です。
こちらでは、ビジネスの進捗を測定するための主だった指標を検討します。
IT系のビジネスでは、ビジネスの目的であるKGIという指標(例:利益)を、KPIという様々な指標(例:ユーザー数・課金ユーザー比率・課金ユーザーあたり平均月額売上・平均継続月数・顧客獲得単価…等々)に分解して、継続的に測定・改善することがよく行われます。
なので、このような構成要素があるのですが…他のビジネスでは、ビジネスモデルを最初に作る段階では検討する重要性が薄いため、無視しても結構です。
まとめ
9つの構成要素が書けたら、最後にもう一度全体を見直して、各要素の組み合わせが戦略として整合しているかを確認しましょう。
また、どんなビジネスでも、最初に作ったビジネスモデルがそのままうまく行くことは少ないです。
一旦作成したら、実際にビジネスの実現性が検証できる最低限のデモやティザーサイトを作成し、うまく行きそうか確認しましょう。
その上で、継続的に修正していく前提で検討しましょう。
皆さんのビジネスモデル構築がスムーズに進むことをお祈りしています!