こんにちは、ベンチャー支援をしている公認会計士の岡田 哲意です。
この記事では、
- ビジネスアイデアとは何か
- ビジネスアイデアの構成要素と作り方
について書いていきます。
もちろんビジネスアイデアの作り方に正解はなく、人それぞれ自分に合った方法を編み出すことが重要です。
研究者・技術者の皆さんが起業する際に、どのようにビジネスを考え始めれば良いか、一つの方法として参考にしてください。
目次
ビジネスアイデアとは
研究者・技術者の皆さんが起業をするのは、自分の研究や技術を事業にしたいからという理由が多いと思います。
では、それをビジネスとしてどう形にしていけば良いのでしょうか。
インターネットで「ビジネス アイデア 作り方」などと検索すると、非常にたくさんの方法が出てきます。
ビジネスアイデアの作り方には、たくさんの方法論があるんですね。
慣れてきたら、たくさんの方法論を使ってどんどんブラッシュアップすれば良いのですが、この記事では「3C」というシンプルなフレームワークを紹介します。
3CはCustomer(顧客)、Company(自社)、Competitor(競合)を指し、この記事では、この3つのポイントを抑えたアイデアを「ビジネスアイデア」と定義します。
ビジネスアイデアの構成要素と作り方
では具体的に、どのような順番でアイデアを練り上げれば良いでしょうか。
Company(自社)
自分が持っている研究・技術を棚下ろす
まず研究者・技術者の皆さんはそれぞれ研究分野や得意な技術を持っていると思いますので、それを書き出してください。
その際、過去の論文や特許等だけではなく、自分が起業した後に強みにできそうな分野をできる限り列挙してみてください。
実際に起業してみると、事業に必要な知的財産を生み出す必要に駆られることが多いからです。
Customer(顧客)
どのような顧客のニーズに、どのような製品またはサービスを提供するのか
次に、その研究や技術を活用して、どのような顧客のニーズに対して、製品・サービスを提供するか考えましょう。
その時に重要なのは、製品・サービスのアイデアだけでなく、それがどんな顧客のどんなニーズを解決するものか詳しく考えることです。
研究者・技術者の皆さんにありがちなのは、この顧客とニーズの検討が少し甘くなってしまうことです。
自分で研究や技術を持っていない起業家の起業プロセスを想像してみてください。
ビジネスアイデアを考える際、顧客を探すこと・顧客の困りごとを探すことから始めることが多いです。
研究や技術を持っていないため強みを築きにくい一方、何の縛りもなく顧客だけに向き合うことができます。
実際にビジネスを始めると、このような起業家とも戦わなくてはいけません。
お金を出す顧客の立場からすると、シンプルに、よりニーズに近い製品・サービスを買うだけです。
研究者・技術者の皆さんは「もし自分が研究・技術を持っていなかったとしても、この顧客のニーズを解決しようと起業するか」と考えて、ご自身の顧客分析・ニーズ分析を厳しめに評価してください。
具体的に顧客やニーズを分析して、製品・サービスのアイデアを考えるステップはどのようなものでしょうか。
順番は入れ換えていただいても良いのですが、一例をお示しします。
ふわっと製品・サービスを考える
まず頭を柔らかくして、自分の研究や技術を使った製品・サービスのアイデアをふわっと考えてみます。
その時に、できれば1つだけではなく、複数のアイデアを考えて書き出しておくと良いでしょう。
この段階では、あまり難しいことを考えず、たくさんのアイデアを生み出すことを重視してください。
製品・サービスを買ってくれる顧客を考える
次に製品・サービスを買ってくれそうな顧客を考えます。
その際に「一般消費者の若者」「病院」というレベルではなく、もう1段階・2段階具体的に考えるのがコツです。
例えば「年収500万円以上の子なし夫婦の20代男性」「地方中核都市の内科クリニック」という具合です。
いまはあらゆる分野で、製品・サービスがあふれている時代です。
顧客像が漠然としすぎていると、製品・サービス企画が総花的になり、誰もが良いと思うが誰もお金を出してまで買わない、独自性のない企画になってしまいがちです。
顧客のニーズを考える
顧客を具体化したら、その顧客が本当に製品・サービスを買ってくれそうか、ニーズを考えましょう。
MBAのグロービスによれば、ニーズとは、人間が生活を営む上で感じる「満たされない状態」のことです。
もう少し深く考えるには、ハーバード・ビジネス・スクールのクリステンセン教授のジョブ理論がヒントになると思います。
簡単にいえば、顧客は日常生活や職業生活を営む上で、何か達成しなければならない/したいゴールがあり、そのために様々なことを行わなければなりません。
顧客はそれらの様々なことのうち、大変なことから他の人にお願いしたくなる、という理論です。
このように顧客視点で、顧客の生活やゴール、ゴール達成のために顧客がやらざるを得ないことを考えて、何を解決するから顧客が買ってくれるのか、具体的に考えるのが重要です。
また、良いと思えるアイデアについては、できる限り顧客に近い人にインタビューしてみて、ニーズを確認することも重要です。
この時点で「ニーズがある」という意見をもらえたから本当に買ってもらえるかはわかりませんが、顧客候補の反応を見ながら、ついでに普段の彼らの生活や困りごと等を聞ければ、アイデアの精緻化のために非常に有用です。
この時点で、当初複数考えたアイデアのうち、事業化できそうなものは少数に絞り込まれたかもしれません。
製品・サービスの機能やデザイン、顧客に提供する体験を具体化する
顧客像やニーズを深く検討したら、再度製品・サービスのアイデアをブラッシュアップして具体化していきます。
顧客に本当に必要な機能は何か、デザインは何を優先すれば良いか、顧客に提供する体験のうち最も重要なものは何か(場合によっては製品そのものより、販売方法やアフターサービスが重要かもしれません)を慎重に検討していきます。
ここまでできたら、Customer(顧客)は一旦OKでしょう。
Competitor(競合)
他の製品・サービスと比較して何が優れているのか
最後に、有望な製品・サービスについて、競合するものがないか調査し、勝てるかを検討します。
この時点で考える競合の観点は3つです。
- 直接の競合
- 代替品
- 将来の競合
直接の競合
これは最も一般的な競合の概念で、自社と似た製品・サービスがないか調査します。
その上で、自社の製品・サービスが顧客ニーズの解決において、どのように優れているのか考えます。
代替品
直接の競合がなければ、狙う顧客がニーズを満たすために仕方なく実施していることや、仕方なく使っている製品・サービスがないか検討します。
例えば、スマホゲームの直接の競合は他のスマホゲーム開発会社ですが、顧客のニーズが「お金をあまりかけずに暇つぶしをして、達成感や感動を味わいたい」であれば、Netflix等も代替品になると思います。
なお顧客を直接の競合や代替品から、違う新製品・サービスに乗り換えさせるには、10倍の品質または価格メリットが必要と言われることもあります。
人も会社も、これまで使っていた方法や製品・サービスから他のものに乗り換えるには、比較検討や学習のための手間がかかるためです。
将来の競合
いま競合や代替品がなくても、自社が成功し始めたら後追いでどこかが事業を立ち上げると考えましょう。
例え国際特許を取っていたとしても、良いビジネスであればあるほど、ライバルは特許を回避して追随しようと考えます。
また業種によっては、特許を無視して真似をするプレーヤーも出てくるでしょう。
そのため、まずは後追いで参入する可能性のある企業を幅広い業種で洗い出し、「参入障壁(Moat)」を構築する必要があります。
とはいえ、「将来の競合」についてはビジネスアイデア段階では考えきれないことも多く、事業を立ち上げながら並行して検討する場合も多いです。
一文にまとめる
ここまで3Cを考え切れたら、最後にそれを一文にまとめてみましょう。
例えば「私は〇〇という製品・サービスを提供します。〇〇という顧客の〇〇というニーズを解決する製品・サービスです。現在顧客は〇〇というソリューションを使っていますが、〇〇という技術を用いて、〇〇という点で圧倒的に差別化します。」という具合です。
プロセスは色々書きましたが、非常に説得力のある一文を考えられれば、途中のプロセスのいくつかを省略しても大丈夫です。
まとめ
ここまでビジネスアイデアの作り方を説明しましたが、いかがでしたでしょうか。
思ったよりステップが多く大変、なかなか良いアイデアが思いつけないという方もいるかもしれません。
どんな起業家も、最初から素晴らしいアイデアを持っている方ばかりではありません。
「アイデアは新しい組み合わせである」とよく言われます。
様々な情報のインプットを通じて、アイデアは磨かれていきます。
良いアイデアが思いつかない方は、詳しい人へのインタビューや論文・書籍・インターネットを通じて、インプットを増やしてください。
皆さんが良いアイデアに辿り着き、起業準備がスムーズに進むことをお祈りしております!