こんにちは、ベンチャー支援をしている公認会計士の岡田 哲意です。
この記事では、
- 起業の定義
- 日本における起業の現状
- 起業の種類
について書いていきます。
これから起業を考えている方のために、基礎の中の基礎情報だけをまとめましたので、ぜひご一読ください!
目次
起業の定義
このサイトを訪問する方は起業に関心がある方も多いかと思います。
では、そもそも「起業」とは何でしょうか。
広辞苑で調べてみると、
き‐ぎょう【起業】
新しく事業を起こすこと。
ついでに「事業」についても調べると、
じ‐ぎょう【事業】
①社会的な大きな仕事。「慈善―」
②一定の目的と計画とに基づいて経営する経済的活動。「―をおこす」「―に失敗する」
とのことです。
特に起業の文脈では②の意味で使われることが多いかと思います。
ポイントは何らかの「目的」と「計画」があるビジネスを新しく始めることでしょうか。
日本における起業の現状
さて「起業」についてイメージが湧いたところで、次は日本における起業の現状を見ていきましょう。
政府による「成長戦略実行計画」で「スタートアップ企業への投資」等が謳われ、経団連が政策提言「Society 5.0」で「既存産業の保護ではなく、スタートアップ振興に大きく軸足を移すべき」と提言するなど、官民ともに起業を支援するスタンスが強くなっています。
背景として共通しているのは、デジタルとリアルが融合していく今後の社会のなかで、スピード感を持って事業を立ち上げるプレーヤーが求められている点です。
GAFAと呼ばれるGoogle・Apple・Facebook・AmazonといったIT系のベンチャー企業が世界の時価総額ランキングトップを独占し、日本でも広告業界・携帯電話業界・小売業界で高いシェアを占めています。
さらに彼らはIoTや人工知能といった技術を活かし、製造業やヘルスケア業界等、他の市場も果敢に攻めています。
上記から、日本経済・日本企業にとって、いよいよデジタル化の波が無視できない状況になったといえます。
さらにGAFAは非常に事業展開が早く、日本の伝統的大企業ではスピードで立ち打ちできないとも言われています。
日本の大企業は、社長が社内昇進を重ねたサラリーマンのことが多く、創業社長と比べるとトップダウンで指示することが難しいため、どうしても意思決定に時間がかかりがちです。
だからこそ、スピード感を持って事業を立ち上げる起業家が日本からもたくさん輩出されることが望まれているのです。
それでは政府や大企業の支援に基づき、実際に日本の起業は盛り上がっているのでしょうか。
中小企業庁の小規模企業白書2020によれば、日本における開業率(当該年度に雇用関係が新規に成立した事業所数/前年度末の適用事業所数)は、2018年度は少し落ち込んでいるものの、2000年代、特に2010年代は加速度的に上昇しているように見えます。
政府や大企業の支援にもとづき、日本の起業は増えてきており、盛り上がっているといえるのではないでしょうか。
起業の種類
ただ、勘の良い皆さんならお気づきかと思いますが、ここまで私はあえて、起業・開業・スタートアップといった言葉をごっちゃにしてきました。
上記の開業率のデータはあくまで新しくビジネスを始めた事業所の比率といった意味合いでして、そのなかには「目的」と「計画」を持たないビジネスも含まれています。
「目的」と「計画」を持っているかを客観的に評価するのは難しいので、仕方ない面もありますね。
また、政府や大企業の提言では「スタートアップ」といった言葉が使われています。
これは実は、ちょっと単なる「起業」とニュアンスを変えていると思います。
一般的にベンチャー界隈では、起業にも「スタートアップ」「スモールビジネス」の2種類があると言われています。
「起業の科学」という本で有名な田所 雅之さんの定義がわかりやすいので紹介します。
スタートアップ
スタートアップは一言でいえば、「指数関数的に急激に成長するビジネス」です。
上記のGAFAは起業したばかりのとき、まさにスタートアップといえます。
いわゆる「ベンチャー」という場合も、このスタートアップを指すことが多いです(色々な意見がありますが)。
まだ顕在化していない市場を対象としたり、既存の市場を再定義したりすることで、競合の少ない環境の中で一気に売上や利益を伸ばします。
ただ、まだ存在しない市場を創造するのに近いため、最初の段階では売上がなかなか立たず、どうしても損失がでます。
また「市場自体がやっぱりなかった」ということもあり、失敗するリスクも高いため、ハイリスク・ハイリターンと言えます。
資金調達手段としては、確実にお金が返されることを重視する融資は、初期段階では獲得しづらいです。
そのため、ベンチャーキャピタル(VC)等による出資という形態での資金調達を行うことが多いです。
スモールビジネス
スモールビジネスは一言でいえば、「線形に徐々に成長するビジネス」です。
すでに存在する市場に対して、他社より優れた製品や価格が安い製品を提供することで、確実に売上や利益を伸ばしていきます。
製品開発が必要な場合は初期段階では売上が立ちませんが、製品を販売後は順調にいけば、売上も利益も徐々に成長していきます。
比較的ローリスク・ローリターンといえます。
以下の図を見ていただくと、イメージがつきやすいと思います。
スタートアップは初期段階では損失を出しますが、その後に一気に利益を出していきます。
筆者のスタンス
ここまで起業とは何かについて深掘ってきましたが、最後に筆者のスタンスをお話したいと思います。
筆者は「研究者・技術者発のスタートアップ」を支援したいと考えています。
10年弱日本のスタートアップ業界にいながら、世界のスタートアップ業界の方とも交流する機会がありました。
そのなかで感じているのは「日本のベンチャー業界は盛り上がっているが、世界(特にアジア)はもっと盛り上がっている」という点です。
特にIT領域では中国・韓国・インドの発展は凄まじく、今後は欧米だけでなく、アジア各国のスタートアップの日本進出が増えてくると思います。
既に中国の「TikTok」「DiDi」や韓国の「NAVER(LINE)」は日本でも有名ですね。
なぜ欧米やアジア各国のITスタートアップは強いのか。
原因としては、コンピュータサイエンス分野での優秀な研究者・技術者の層の厚さや、教育や就職等を通じた欧米の投資家とのネットワーク、GAFAやBAT(中国のBaidu・Alibaba・Tencent)をはじめとした世界的なIT企業のバックアップがあると考えています。
では、日本の強みは何か。
そのときに私が思い出したのは、過去に大企業からのスピンオフベンチャー支援をしていたときにお会いした、日本の優秀な研究者・技術者の方でした。
経営のことも、起業のことも、そんなに知らない。
スタートアップ業界にも知り合いはいない。
ただ「自分の研究成果を使って、新しい顕微観察装置を作って、世界の医学や研究開発を発展させたい」「自分の培ったロボット技術を使って、世界初のロボット義足を作りたい」と純粋に思い、どんな壁にぶちあたっても、起業後お金がなくなっても、なんとか製品をつくり、グローバル市場を開拓する方がいました。
こういった研究開発ベースの技術を、スタートアップ業界では「ディープテック」とも言います。
そこで、私は研究者・技術者の方と一緒に世界的なディープテックの会社をつくるところに、できる限りのご支援をしたいと考えるようになりました。
少し長くなってしまいましたが、このブログを通じて世界的なビジネスを作るきっかけ作りが少しでもできればと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。